みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

からっぽの朝のブルース

 


 水葬の喇叭の合図おかしみいざないながら骸を放る


 天わずか触れる指あり午后はるかひろがるばかり冬のきら星


 蝶番喪う夜よ木箱持て歩きさまよう子供たち来る


 つづきのない夢のなかにて眠れるをいま醒めてゆくかたわらの犬


 ひとがみな憑かれて去りし道半ば老夫のかげと米の汁呑む


 天牛の顎が鈍く光りたる正午をあがる階の果て


 路地裏に蟹現れる夜あけて光りのなかに鎮座し給う


 眼瞑りながらいまだ一騎の夢も見ず頭蓋を被うパーマネント器具のなかいる


 風充ちるときのすきまを歩みゆくひとりでいることのすがしさ


 やまなみの光りあふれるなかをいまクリームソーダが零れだしてる


 ことばもて語ることなし初雪のいわれなき罪降るの日の午后よ


 やがて緑になる われの地平のものらすべて眠り


 色盲の世界の果てにまぎれたるけもののごとききみの祝祭


 からっぽの朝のブルース夢がまだ蒲団のなかに潜むくらがり

 

 


からっぽの朝のブルース