みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

日本式の朝食(2)

 


 気温があがる、
 季節が変わりましたよ
 野禽になればいっそあの小径を駈けていくものを
 ぼくは鞄を抱えて地下鉄なんぞに乗ってる
 知らないひとがじぶんでないからって理由でどうしてか、傷つけたくなる
 ナイアガラまで西神山手線はつづきませんか? それは可能ですか?
 市の予算とぼくの膵臓とのダイアローグ、みなさん、準備いいですか?
 ヨシナガさんが書類を持って、ぼくのまえをなにもないように通過する
 愛想笑いと電気工事だけがつづく
 おじいちゃん、おばあちゃん、
 どうもごめんなさい
 こんなことになってしまって、
 ぼくはあなたの娘みたいに献身的にはなれません
 ぼくに科せられたものをたやすく譲ってしまう
 ああ隣の席が空いてるんだ
 ぼくは臆面もなく坐るだろう、そして次発の1両目にすら、
 ぼくがひらいた本のように鰺が、
 精液を噴きだしてきみを待ってることに脅かされる
 なぜだ、
 かぜが吹き荒れる、そっちの青がちぎれる、
 もしも水禽であればずっと漂っていられたものを
 侵入を赦されないぼくのもっとも暗いところから食みだした夜が反転する、
 クロキさん、きょうのデータはぜんぶ保存しました、
 それをあなたが眼のまえで喰ってくれるなら、
 どうかうれしい
 クロキさんは扉をしめて、なにもいわなかった
 ぼくは朝食を食べにいった
 そのときサーカスのピエロが、
 定食の味に、
 日本式の味に、
 文句をいってたんだ