みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

吉報(09/11/04)

 

 おれが夜
 の充分すぎる
 そのたわくえに魂しい
 を清められているみぎり
 日の本は愛痴から生まれでた
 屠与太の自動車(うんこ)がその犠牲者の血と
 脂で臭う車体をわが戸口にすべりこませて突如
 冬枯れの町がひびわれくだけてしまうような
 冷たい警笛をぶちかまし始めた
 しかもその音は一秒や三秒や
 五秒では終わらず
 七秒や九秒や
 十一秒であっても
 鳴り止まない
 ようやく起立し始めた
 ノートのうえにいる神紙も
 勢いよく払いのけられ
 すべてを薄っぺらい
 造花のびらびらに
 変えてしまった
 なんということでしょう!
 テレビジョンの無数なる銃眼から
 女の声が驚嘆をあげて
 だらしなくひらいた
 おれの唇ちから
 きれいごと
 が落下
 する
 のが見える
 もうなにもかもが
 じゃまされてしまって
 せっかくのヴラマンク
 性犯罪者のゴーガンに変わる
 木でつくられた窓を向こうにして
 おれはおれのあたらしい敵どもを見
 洗浄を知らない手と足をくぐらせながら
 その自動車のなかを確かめる 
 まったくのあほうどもが
 いちだいに五百匹も
 棲みついていて
 廃油まみれの
 息とよだれに気づかずに
 からだにそなわったあらゆる孔で
 自己肯定のおしゃぶりをおぞましくしゃぶっていた
 吐き気を恋人にして走りまわっておれは神の
 ノートにそのすべてをぶちまけてしまう
 やかましすぎるあほどもよ
 いますぐに黙らなければ
 おれはまたひとつ至上の
 現代詩を完熟させ
 おまえらのあほうづら
 を言の葉のうちにし
 雨季の寂滅で
 みじめたらしく
 濡らしてやるぞ!
 おれの嘔吐の
 そのわずか一瞬の好きまを
 刃い葉できりひらいて
 未知なる男が侵入を
 組み立ててきた
 全身の毛穴から生きた排気が噴きだして眼をひらき
 黒に限りなくちかい青で怒りを突きだして笑っている!
 いったいこいつはなんなんだ?
 おれはとまどいの右-32席を
 あわ手手いて坂砂にした
 そんなばかなおれに
 やつはまったく平気な顔でいう
 あたしがきみのあたらしい詩情なのよってな
 愛らしい衣の襞をひだひだとさせて
 鋼鉄の赤いランドセルから
 リコーダーをもったいぶって
 とりだすとへもけの歌を吹き鳴らす  
 おもてのくるまはなかの害虫
 もろとも苔むす礫にかわる
 なんということでしょう
 なんと
 あざやかすぎる
 現代詩のあらわれ
 だろうか
 またしても
 おれはあたらしいものを
 股ぐらのふくらみにくくりつけ
 十一月の初冬に立つ
 裸の男になってしまった
 警笛などもう相手にはならない
 季節の弾倉にはげしい言の葉が光る
 そしてかれは乳房をふるわせ
 乳香をたらす
 日の本の大地に
 暴れながら咲き誇り
 おれの魂しいの
 うえに叩きつけるように
 その肉体を捧げた!