みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

自画像(2009)

 

 十一月
 猫がはるか
 地上に走つている
 暴きたてられてやまない
 ものが黒から到着と出発
 を同時刻に描きだす午后
 だつた──おれは救貧病院
 のあたまのうえに立ちながら
 みずからを曝すための自画像
 について見えない停車場
 から発想を待機していた
 それはあらゆる天語の
 ぷらすちつくに酔い痴れた──
 あるいは憧憬してやまないうすらばか
 どもを叩きのめして停まらない
 都市間鉄道の巨きくながいへび
 もうじき走り現れるころあいだろうな
 ふたつしかない手をおれは隠しにねじこみ
 哲とした自画像を創りはじめていた
 A4用紙に黒い言の葉の下絵
 を書きこみ、黒の岩彩でかげを光らせる
 そのうえに極彩色を暗い順ぐりにして輪郭を埋め
 接着液でその色々を保護してやる
 そのうえを油彩によつて立体にし
 細さ0.28の水性ボールペンで輪郭を確かにする
 あとはあらゆる穢れをこの都市から拾いあげ
 土に葉に知らないひとびとの死亡記事、
 虫の死に木の生をそしておれの手形
 などを正しくあやまつて額縁にする
 そのとき秋はまつたく
 そのものを保つて
 閉じられる
 これは絵画の
 かたちにみせた黒い
 金曜日の現代詩なのだ
 おれにふさわしいは
 決して印象派
 ではなく
 走りながら
 立ち止まる自画像
 そして古代のけものたち
 がひりだしたものの化石に
 天然の漆しで金箔を施した
 まつたくあたらしくなつかしい
 財宝にちがいない
 ねこは今るんぺんの
 ひざにのせられ
 刃を待つてい
 るところ