みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

それはまるで毛布のなかの両手みたいで

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 いまでもこの場面を路上で叫ぶものがいる
 幾晩も眠れない夜を送った
 夜のほどろにはそんな人間ばかりががらくたみたいにいる
 いまのわたしがどうなっていくのかを観察しながら
 燃えあがるスカートを眺める
 水鳥が死んでる
 片手には斧、
 もう片手には愛が咲く
 それはまるで毛布のなかの両手みたいで
 あったかいんだよ、アグネス
 でも追いつめられるんだよ、アグネス
 みんながそれぞれの通信のなかで、
 蛸壺に落ちただけなら、
 技術なんておとぎばなし
 光りが歩く
 警笛がたちどまる
 かれらかの女たちは始めたんだよ、アグネス
 けれでも放送が突然に切られて、
 信号が変わる
 表通りで自転車が発狂し始めたのを皮切りにして、
 町のひとびとが凶器に変わった
 いや、それを撰んだといっていい
 エリンは燃えながらワンピースをゆらして踊った
 ケンゾウは新聞記事で家を建て、
 スティーヴンは星狩りの舟に乗り、
 それぞれのちがったおもざしを光らせて、
 第7惑星の空にちらばっていった
 わたしが聴いたのは
 最後の2小節、
 警告と発展だけだった
 ジェーンがキヨコの手を握って、
 なにも形成されないところで起きた、
 現在が発生する磁場の衝撃波、
 そしていまはもうだれも残っていないという事実、
 だけどアグネス、きみは受け入れることができるんだよ。