ためらいのなかでぼくはやっと鍵盤を叩く
そしてぼくを見限ったかの女を
さらにぼくが見限る
なんにせよ、だれかの下した判断ならばどうしようもないこと
できることはなにもない、他人同士のできごとだ
相互フォローが終わって、
ぼくはかぼやく、
あんな女なんかって
でも、かの女は売れ筋のインディー作家
そしてぼくは売れないどころか、識られもしない紙切れだ
ぼくは秋草のなかの、もっとも暗いところへいった
アパートの駐車場で少年がバットの素振りを繰り返してる
なにが名声か、
なにが文体だ、
まったくもってどいつもこいつもきれいごとを抜かしやがって!
けっきょく物語はぼくのなかには現れて来ない夜半すぎ
たったいま安全地帯の違法駐車から、
黒い男が降りて来て、
ぼくに道を尋ね、
チップを渡す
なんだか悲しいよな
仮にここまで行数を増やしたことによってなにかが喪われるのなら、
まずまさっきにかの女の妬心、そして現実と理想との乖離をどっか遠くへやっておくれよ