みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

賞味期限の切れたワナビーはいったいどこで果てるのか

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 仕事がなくなったんだ、ルゥー。期間が切れたんだ、ルゥー。そういうわけで不安のなかで求人を捲る。歌集を来月だ。それまでにあたらしい仕事がいる。というわけであしたの面接をふたつ決め、障碍求人もいくらか集めた。でも、今月には小説を書かなくてはならない。ふたつ書いて賞へ送るつもりだ。しかしとてもおれの書くものがメジャー文壇のひとに受けるとはおもえない。けっきょくは書くための動機探しのような気がしてる。どうやらおれは草臥れてるし、あと締め切りまで13日しかない。慌てて種本を探して、武者小路実篤「お目出たき人」、西村賢太「小銭を数える」を買った。清野栄一の本を借りた。でも今度は読む気が起こらないと来る。
 ブログはだれにも読まれない。そして詩はしばらく書けそうにない。Twitterに書くことなんか、もはやない。今月をやり越せるほどの食費が危うい。おれはいったいなんのためにこんな幕間狂言を演じているのか、まったくわからない。というわけで小説のうち、いっぽんは過去の短篇をふたつ繋げ、あいだに1篇挿入するというかたちを採ることにした。ただし翻訳臭い文体は見直すことにした。いまは23歳のとき、照明倉庫で働いてた体験をベースに嘘を書いてる。なんとも湿気た気分。あのときのおれはいまよりもデブで、そして酒呑みだった。かの女とはなにもなかった。いまはシアナマイドを呑み、酒を断ってる。そして喰う量も減らしてる。いまは80キロ。あと10キロ減らすだけだ。
 そんなこんなでおれはまたしてもポンコツPCのまえにいる。けっきょく港湾労働でマックを買う金を稼げなかったというわけだ。おれは休み過ぎたし、酒を呑みすぎてたからだ。このままでは歌集の出版費用も危ない。笑えないことばかりだ。じぶんにあるのはせいぜいのところ、蓄えられた脂肪だけだとおもう、このごろ。さっさとこの忌まわしい機械を終わらせて本を読むべきなんだ。せっかく買った座椅子のためにも。詩人としても、歌人としても、35の男として、戦わなくてはならなかった。──なにと?

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 今朝、火傷しちまった。蒸し野菜を皿に移そうとしたとき、フライパンの熱湯がおれの右の腿にかかった。悲鳴をあげ、あわてて、床を拭いた。それから浴室にいって水をかけつづけた。数時間後、緑色の火ぶくれができ、醜い唇みたいに現れた。おれはそいつに針で穴をあけつづけた。火傷の痕は消えそうにもない。またしても肉体的欠点が、できたというわけだ。
 賞味期限の切れたワナビーはいったいどこで果てるのか。文藝のニュースはどれも輝きに充ちていた。綿矢りさが写真つきでインタビューに答える、最果タヒ町田康と対談する。それなのにおれはいつまでも真剣になれず、なにごとにも熱くなれず、右往左往してる。おまけに日本文学に丸っきり興味が持てない。けっきょくおれは物語を書くことがそれほど好きでないのかも知れない。だからこそ1行詩の短歌に15年も浸かっていられたのかも知れない。
 もうひとつの小説についても語ろう。これはロード・ノヴェルだ。移動の記録。場所を歴るごとにかの女へのおもいがどう変化して消えていったのかを書くだろう。こいつは10月30日まで仕上げたい。けっきょくは読みたいものを書くしかない。
 救いがたいのはたぶん、おれ自身よりもおれを取り巻く環境のせいなんだろう。もちろんそれを変えるのもおれの責任なのだが。文筆に徹するための、もっと簡素な環境がいる。いまのようにあれもこれもと手をつけるのはやめることだ。──室を片づける。物事の順序を決める。それだけだ。

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 というわけでまずは「小銭を数える」を読むとしよう。

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お目出たき人 (新潮文庫)

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小銭をかぞえる (文春文庫)

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