みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

旅の写真帖:東京

 

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  ずらかりたい。たしかにあまい考えかも知れない。わたしはアマゾンの下請倉庫をうろつき、右のものをひだりに、うえのものを足許へ動かしてるあいだずっとそう考えてた。いまいるところを抜けだしただけであるのはちがった現実であって、またそいつに喘ぐことになるとわ かってもいる。それでも情況を変えようとせずにはいられなかった。夜から明けまでの日払いの、半端仕事。はした金のためにあく せくとしながら、長年の脱出願望をこの手に掴もうと汗を流してた。
 わたしの仕事はほとんどが東灘の倉庫だった。でなければたまに須磨のほうで、どちらも倉庫街。まちがってもちかばの中央区内で はなかった。日当が8千ほどの夜勤をやっつけやっつけして、ようやく8万ほどつくった。わたしはパートタイムの労働者で、フルタイ ムの与太者だった。
 ごくごくはじめ、仕事探しに口入屋をまわってるあいだは旅のことはそれほどの関心でもなかった。新潟は十日町へ移動できればいいとしかおもっちゃなかった。なんとか身に合った案件にありつき、金が溜まって来て、あの願望とふたたびってわけだ 。まずは青森にいくことした。もう数年もまえからいくことを公言し、果たせないままでいた。詩人の佐々木英明にもそういってた。手紙のなかや、電話でもいつかいくといったままだった。9月10日、最后の仕事をやって、12日のバスを予約した。青森では市街劇が終わったあとだ。ほんとうは劇に合わせるつもりだったが、金がなかった。はずれ馬券をくず箱に棄て、町をぶらついてたというわけだ。

 

9/13

 

 乗るバスをまちがえて京都で夜を明かした。バス会社のなまえがよく似てたからだ。サンヨーバスとサンヨー交通とかなんとか、そういったぐあいだった。まちがいがわかったあと運転手と悶着をし、京都駅で降りた。後続のバスやほかのバスを求めたが、だめだった。近場の安宿を探した。これもだめだった。しかたなく停留所で寝た。おもっったよりも空気は冷たかった。別のバスを予約して朝東京へむかう。

 東京は12年ぶりだった。21歳のとき、二度上京した。なんとか暮らしを立てようとした。だめだった。作家に弟子入りし、飯場に潜りこみ、自称やくざのやろうにあわやけつの穴を奪われそうになっただけだ。やつはいまどうしてるだろう?──そんなくだらないことをおもってしまう。やがて窓は暮れて川崎の重工業地帯を過ぎた。

 

 

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 川崎の重工業地帯を抜ければ東京だ。

 

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 新宿でひと──詩人──に13年ぶりに会い、中野でひと──「裏庭文庫」主宰人──の室に泊めてもらった。翌日、神田と秋葉原をぶらつく。入るはずだった金が入ってなかった。車のオークション会場の仕事で入るはずの金だ。作業確認の紙を提出していなかった。電話口でわたしは苛立ち、汗を流した。しかたなしにぶらつき、電気街や古本屋街をまわった。

 

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 夜、バスを逃してしまう。ほかのバスに乗ろうと東京駅までいく。しかし空きがなかった。中国人マッサージの勧誘に乗って、雑居ビルの一室で眠った。

 

 

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9/15

 

 その夜もバスに乗れなかった。しかたなく上野駅のちかく野営した。

 

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 朝、青森行きのバスに乗った。

 

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