見あげればただ茫漠として、
浮き雲の愉しさを識る
なにかがおかしいとおもう指先の世界で
たったひとり雲を見てる心象の果てなんか
ぜんぶ、くそ喰らえだなんて、
嘔き棄てたくなってしまい、
やがてさようならの、
余韻もなく、
果実と、
鉄の、
ゆくえも知れないところで、
碍子がゆれ、
電話線が断ち切られるのさ
ぼくの解剖学のなかでいまは湿った心が、
愛善居士と名乗って、
だれも知らない汗腺のぬめりとか、
瓜を切ったあとの、
生温さとか、
どうでもいいようなことに気づくだけ
どうでもいいようなことに追いまわされるだけ
浮き雲は元気に
太陽に曝され、
浮き雲は鈍重に
大気のなかで乱れ、
やがて太ってしまう空欄のなか、
ぼくは冷めた鮭を喰い、
いま昼餉を終えようとしてるところなんだ