みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

襲撃

 

 スパゲッティに飽きてひたすら蜆汁を啜ったのは午后、
 まだ裸になれないひとびとのなかで奥まった歯ぐそをほじって、
 長年の夢みたいなうつくしい隣人たちと罵声を浴びせあう
 憂いを含んだ夕べ、牛丼屋のテイクアウトがやかましい通り
 おれは詩を書くように小説が書きたい
 デニス・ジョンソンの短篇集を読み、夢魔の到来を待つ
 その頃合い、西瓜で武装したテロリストがおれのドアを叩き、
 エホバの証人天理教よりも質のわるい呼び鈴が鳴る、
 おれは応えない
 ヘビイチゴでいっぱいの弾倉を確かめ、
 スモモで充たされた冷蔵庫を盾にする
 こいつはたったひとりの戦いなんだ
 やがてドアがひらき、
 裸の男たちが、雨の女たちと、
 葡萄の種をフルオートで発射する、
 たぶんマウザーだろう
 まるできみが見た、
 きのうの夢のよう
 おれはルーガーにつめたイチゴで応戦し、
 ひとりずつ殺してった
 そしてパイナップルで火葬した
 したたかにレモンの果肉がゆれる
 アケビがばらばらになった通路にでて、
 おれはやつらの灰をむさぼり喰う
 到着した警官たちがおれをぢっと見るのはきっと、
 おれの編みだした詩学がその制服をあざ笑ってるからだ
 安心しろ、きみにためにバナナを用意しておいたんだ
 あらゆる比喩に抗い、決して挫けないきみのために
 おれは催涙弾で清められた室のなかではじめて、
 裸になろうと、
 パンツを降ろし始めるんだ