みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

植物図鑑/最期の戦い

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 雨あがりのビル街で待ちくたびれた動画とともにして、
 黄色い茜が
 楠木のもとで啼く
 首に搦むは絞首用の縄
 くるぶしに罠を〆めて
 逆さにされた聖母が青白く嘘の証言する
 判事は賽を流れ、雪のなかで蘇る蛙
 しだれ柳が断線した
 傍受された野菊が
 ひとりずつ自裁するのはたぶん、
 過古からやってきた男の断面図のせい
 ひとが詩に、辞が屹立する
 おまえはことばなのか、
 おまえはことばなのか、
 棕櫚の枝で左手が泣いてる
 オープンリールの建築家が愛撫を玄関するようになって、
 もはやだれがことばのかがわからない
 容疑者は3丁名の夕日、
 背丈は6フィート、2インチ、
 仕様はカラーで、ステレオを内蔵とのこと、
 目下、極秘裏にて追跡調査を怠るな
 そしてぼくがまちがって追われる
 最期の、水禽の過ちが、
 桶のなかで融けて、
 乳飲み子たちの、
 箒を切欠に、
 どうしたものか、
 声がいう
 死に絶えたものに声を与えることはできない
 他者におのれの声を語れといってもそれは期待できない
 ただ戦くものらとともにして、繰り返すがいい
 舟に乗った青い山賊とともにしてぼくらは麦を吹く

  枝を洗え
  うろを洗え
  そして畝を洗え

  枝を洗え
  うろを洗え
  そして畝を洗え 

  枝を洗え
  うろを洗え
  そして畝を洗え(*repeat)