たとえば最初の光りの切れっ端が
丘のむこうに落ちて
弾けるとき
おれはきみのことなんか忘れて
マスキング液をフォルクスワーゲンに塗ってる
だれかがおれのことをとやかくいうことはない
いまではみんなおれを観ない
映画みたいに
ラジオみたいに
ただ一方的に伝えるだけなら
どんなに楽かと考える
あらかじめ決められた科白のなかで
くたばりたい
かの女の新作はいまだ、
封切りされない
いまだ
天使と猟師が婚姻を交わす
入り江にむかう舟のうえ
銃と羽を重ねあわせ
しっぽりと
水上を音楽してる波、やがて熱くなる湖水
矢も盾もない、この瞬間を彩る映像
ふたりを包囲する水鳥の声
みんながカメラになって
ぶら下がる、
永遠の、
スモモの枝で、
いま。