みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

新年の手紙(Ⅱ)

 

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 きみに手紙を書こうとおもいながら、いったい幾年が過ぎたやら
 ぼくは病院と留置場と裁判所をいきつもどりつして、
 すっかりくたびれてしまった
 ぼくはぼくがなにものかになることを待ってて、
 待ちすぎてとても疲れてしまったんだよ
 曳航のしすぎで、あらゆる夢は腐れ、
 またおなじように自身もわるい臭いを放ちはじめる
 ラブ・ホテルの燈しに搦められ、
 アルコールに潰され、
 そしてみずからの性によって放逐されるだろう
 放浪には厭いてしまった
 女たちはもはやぼくのかげに唾さえも引っかけない
 暮れる銀河、
 麦のような男たちが、
 パークサイドで莨を巻いてる
 舌を湿らして、
 紙を濡らす
 そして咥える
 煙が通りを歩き、タクシーに轢き殺される
 つまりは「正しきものら」の棲まう場所へ、ぼくもいきたいんだ
 正しい暮らしと、正しい仲間たちのなかで顔を変えて再登場したい
 消え去ったもののなかで輪唱して生きていたくはない
 ただぼくはぼくを再構成して、今度こそまちがいのないところで息がしたいだけ
 きみなら笑うかも知れない、ともかくすべてが灰になるまでぼくは新年の手紙を書くだけだ