みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

きらきら(2018)

 

   *

 すべての訓示をやぶり棄てたときから、 
 そうしてふたたび滝のおとが失せた
 あまりにねぐるしい、
 にんげんの家で
 だれもが耳を
 欹てる
 たったひとりぼくは廚で麺麭を焼いてる
 だれかが庭で黄葉を踏む
 たしかに滝は枯れてしまったんだ。 

   *

 斑鳩の空にいまだ、
 たどり着いてないというのに
 もうきみは眠くなって、
 ぼくにだだをいう
 それでも、
 決してはなれないでいる
 それはやさしさのためでなく、
 最愛を滅ぼすため、
 見なよ、
 柘榴の木が燃えてる。

   *

 鶺鴒の森は焼かれ、
 打たれるがまま、
 欲しいままにされて、
 うつくしく濁る、
 水よ、
 水よ、
 石の柩にきみは跨がって、
 黄金水を放てばいい
 報いをくれてやれ、
 塔の主に、
 城の主たちに、 
 かれらは遁れ、けものがれ、
 われらは両目をつりあげて、
 やがて狐となりました。

   *
  
 きらきら、
 光りがまぶしいね
 きらきら、
 光りがきれいだね
 きらきら、
 みんなと一緒だから怖くないって、
 きらきら、
 ないにも見えない、もう聞えない
 きらきら、
 きみはもういない
 きらきら、
 斑鳩の果て、
 雲路に、
 毒が、
 混ざっております、 
 あれが鰯雲です。