みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

裸足になりきれなかった恋歌

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 とにかくぼくがいこうとしてるのはきみのいない場所
 トム・ヴァーレインにあこがれる女の子のいる場所
 リアルさがぼくをすっかり変えてしまった
 現実の鋭利さ、あるいは極度の譫妄、
 それらの果てで、いままでのあこがれがぜんぶ砕かれたんだ
 きみのことだってもはや小さななにかさ
 終夜営業のガス・スタンド、
 その窓に残された指紋や伝言みたいなものさ
 きみがいる世界、
 あるいは場所、
 それはもうぼくとは関係がない
 繋がってしまうことなんかできないのをわかってる、識ってる
 溶接工が季節のなかでアークを操る
 なにもかもが繋がれてしまうなかでぼくはいつも取り残されてきた
 でもぼくはそんな場所からでていこうとしてるんだ
 なにが将来か、
 なにがアカシアか、
 けっきょくぼくはきみらの世界にはいらないんだ
 けっきょくぼくはこっから去るほかにできることはない
 きみの胸に、どうか朝露を、
 っていうのは感傷?
 それともなりゆきでしかない?
 ぼくには唱える神もなく、
 火のなかで飛ぶ夢を見て、
 はるか胸の奥で、ひとりうなづく
 ハロー、
 ハロー、
 ぼくがもはや、きみに応えないことを信じながら、
 きみがもはや、ぼくに応えないことをおもいながら、
 アデュー、
 アデュー、
 もうじき長距離バスの時刻だ
 荒野がぼくに展がる
 地獄がぼくの手綱を引く
 普遍性よ、
 それがきみのなまえだったっけ?
 初恋よ、
 それもきみのことだったっけ?
 ぼくはもう大丈夫だから、
 ゆっくりと杭を抜いて、
 ふたりしてなにひとつ分かち得るもののなかったことをゆっくりと曝して、
 そしてぼくの月のようにうしろをむいたままで、
 ぼくを罵って、
 ぼくを解き放って、
 くれ、

 

Marquee Moon (Dig)

Marquee Moon (Dig)

 

 


Television - Marquee Moon (1977) full Album