for yuri nakakubo
なにをやりおおせようともかの女にはわからない
なにをしでかそうがかの女にはかかわりがない
もはやかの女がどこにいるのかさえも
わからなくなってすでに10年が過ぎ、
ぼくは夢のなかで
OSSへと
あの倉庫へと
急ぐ
もういなくなったかの女に与える辞を探しながら、
急ぐ
もうじき去ってしまうかの女に伝える辞を探しながら、
焦る
夢の倉庫は照明器具を扱ってる、
ぼくは1階の出庫口から小さなエレベータを使って、
2階へといく
かの女はそこでぼくと働いてたんだ
フロア主任がぼくを怒鳴る、
そして追いかける
ぼくは走る
やがて暗がりのなかでピッキングのリストがちばらり、
鬱病の男がぼくを掴まえていう、
きみはぼくの息子にそっくりだっていう
突き放してフロアの奥へ走る、
主任は気味のわるい、
口のわるい、
品のない男で、
あんなやつになんか負けたくない
でもおとついぼくはかの女にわかれをいって、
そして翌る日、ふけたんだ
それでクビにされた
でも、
いまはかの女は映画のなか、
もっとわかいころのかの女が映画にでてる、
スクリーンの裏手まで、
ぼくはいった
5階の男がさえぎる、
キンジョウさんがなにかいってる、
ケイシンや、もりか運輸、
信州名鉄AとBやなんかのトラックがいっぱいで、
なにも見えなくなる
それでもぼくはかの女のなまえを呼ぶ
──ナカクボさん!
かの女が笑みを浮かべて立ってる
そこで眼が醒めて、
がっかりだ
おなじ町に棲んでたあの子、
おなじ歳だったあの女、
ミヤザキからきたあの女、
バンドをやってたあの女、
みじかい髪が愛おしくなるようなあの子、
なにをやりおおせようともかの女にはわからない
なにをしでかそうがかの女にはかかわりがない
もはやかの女がどこにいるのかさえも
どうか教えてくれ、
かの女が倖せだかを
そうおもってふたたび、
ぼくはまぼろしをfall out してしまう
いつも、いつも、そしていまも、