夏の匂いがする、──ぼくはつぶやく
かの女たちにできることはもうなにもない、──ぼくはやぼやく
母は家をでたらしい、
姉は離婚したらしい、
妹たちはそれぞれどっかで暮らしてる
かの女たちがどこにいるのかなんかぼくの知ったことじゃない
あの家のなかでぼくがずっと異分子として生きてきたように
この町のなかででもぼくはずっと異分子として生きてる
かの女たちのことはなにも知らないし、
かの女たちもぼくのことをなにも知らない
湿気のひどい室のなかでものを綴る、
ものを喰う、
ものを集める
だれとも手を組まず、
だれともわかり合えず、
哀傷という怠惰のなかでずっと、
ずっと臀を掻いてる
夢を見た
季節労働者として荷台にゆられ、
遠ざかるすべてに悲しむ夢
どうしたらいいのか
もうわからない
あの娘ともう一度いい、
会いたい
月が海を照らす
寝汗を掻く
あの娘のなまえを呼ぶ
そして夢は終わる
存在しないってことを経験したい、──ぼくはつぶやく
階段を降りて地上へ立つ、──ぼくは無事だ
知らない顔みたいな通りを過ぎる、
駅を抜ける、
男の性なんか当てにはできない、
せいぜいのところ女に敗北するだけだ
夏の匂いがする、
かの女たちにできることはもうなにもない、
そうやってながいためらいのなかにいながら、
モトコー4で、
Louie Louie の
ハンバーガーに喰らいつく