みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

piss out

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 できればもう少しでいいからましなものをと求め、
 なにも手に入れられないことの憐れさ
 だれもでもない、
 なにものでもないという事実、
 受け入れようと受け入れまいとそれはおなじこと
 だってきょうも郵便受けはからっぽで
 だってきょうもあしたの喰い扶持がないんだから
 できれば愛が芽生えてるところで、
 できれば永遠にそれが育ってるところで、
 暮らしてみたい
 おれがまだ若かったころ、
 姉は花鋏とともに失踪した
 サフラン摘みの邪険のない姿で
 いまも森を歩いてるんだろう
 おれは過古を歩く
 おれはかの女になんの感情も抱けない
 もはや過ぎ去ったなにかでしかない
 もうひとつでもこっちへ踏み込んでみろ、
 おまえの大事なウェスタン・シャツに唾を嘔いてやるぜ
 おまえはろくに書けないくせに吠えてばかりいる
 説教がしたいなら祭壇をしつらえるがいい
 ひとを導きたいのならべつの場所へいくがいいさ
 攻撃に値するのはけっきょくのところ神のみで、
 盲いた詩人どもじゃない
 投稿欄に噛みつくほど、
 おれは淋しくない
 じぶんが存るということのうずきのなかで、
 じぶんがしでかしたことのうずきのなかで、
 じぶんがなにものでもないということのうずきのなかで、
 まだ産まれてもない他者〈きみ〉についておもうとき、
 おれはみずからを笑い、
 転落する、
 そして追放され、
 やなぎのかげに横たわる、
 だんだんあたりが昏くなる
 救急車のサイレンがふいに途絶え、
 だれかの呼び声がしてる
 あれはなんだろう?
 それにこの沈黙はだれがもたらした?
 声がだせない
 きっと閂が落ちたんだ
 wma が破損した、
 spotify に繋がらない、
 sound card を喪った、
 ちっぽけな君主たちの、
 手垢にまみれた頽廃と欺瞞のなかで、
 たったいま素手をふりあげ、
 じぶんだけの音楽のなか、
 蛮族にふさわしい人生を再建してろ。