みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

主題歌(2015)

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 「広告募集」の看板がつづく田舎道
 起伏の激しさに咽を焦がしながら
 かつて父の自動車で走り回った
 いまでもあのあたりを歩けばおもいだす
 いとしいひとたち、
 あるいはいとしかったものたちをおもいだす
 
   それは一九八四年のピープ・ショウ
   あるいは二〇一五年のわるい夢

 喪ってしまうだけの暮らしなら
 もうとっくにうち棄ててる
 懐かしいなどというおもいもなく
 葬ってしまうだろう
 けれどもそれは望みではなく
 抗いですらない

   かつて美しかったもののために歌をくれ
   あるいはかつて慈しみをくれたものたちに歌を

 おもいはぐれてかの地へたどり着く
 バスの発着場にひとり立っては
 迎えてはくれないもののなまえを叫ぶ
 かれらかの女らはなにももっちゃいねえ
 ただもうこっから放たれてくんだ
 急ぎ走りでも掴まえられない
 きっどどっか遠くで歩いてるにちがいねえ
 さっきまでとちがうやり方でその身を焼く
 「広告募集」の看板がつづく田舎道
 起伏の激しさに咽を焦がしながら
 もはやおれをいたぶってくれないきみをおもう
 両の手の箒がおれを撃つまで待ってやろうなどとはおもいはしない

   それは一九八四年のピープ・ショウ
   あるいは二〇〇〇年の別れのとき

 たくさんの主題歌を憶えた
 けれどもそんなことを忘れてぼくこっぴどい幽霊たちから
 いっつもどやしつけられてる
 ただそれだけだ