セイコさんから本の返しにとクッキーを戴く
ぼくはかの女に瀬沼孝彰を貸したんだ
かの女とはあそこ──文藝投稿サイトで知り合って8年になる
そしてオノウエからは年賀状
曰く自転車事故で頭を撲ってしまったという
かの女がかつての同級生で、
いまは雅楽師──クラス会で耳にした──というほか、
ぼくはかの女のことをなにも知らない
なまえ以外のものを得るにはあまりにへだたりがあるということ
禁酒して3ヶ月というのにぼくの腕はまだひきつってる
陸のうえで愉しくやってるmalingererたちみたいに過ごしたいのに
いつまでぽくはふるえていればいいのだろうか
とりあえずセイコさん、ありがとう
オノウエ、どうもありがとう
ぼくらみたいな関係をうまく表せる辞を知ってる?
ただの知人?
それとも古なじみ?
いずれにせよ、ぼくはあたらしい詩を書くつもりだ
そいつが手紙と呼ばれようが、
写真と呼ばれようが、
ぼくにとってはすべてが詩だ
凍てついた看板を工夫が地上へ降ろすとき、
ぼくにはあいにくカメラがなかった
いまでも惜しくおもえてならない
だからぼくはこいつのことを写真と呼ぶことにするよ
おもわず、みずから反省させてくれるあなたがたのようなひとがいて
ぼくはうれしい、とおもう
安い紅茶でシアナマイドを呑みくだし、
またしても宛名のない手紙をばら蒔いて歩く
あなたがたのように少数のひとびとのために歩く