みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

新年の手紙(2019)

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 セイコさんから本の返しにとクッキーを戴く
 ぼくはかの女に瀬沼孝彰を貸したんだ
 かの女とはあそこ──文藝投稿サイトで知り合って8年になる
 そしてオノウエからは年賀状
 曰く自転車事故で頭を撲ってしまったという
 かの女がかつての同級生で、
 いまは雅楽師──クラス会で耳にした──というほか、
 ぼくはかの女のことをなにも知らない
 なまえ以外のものを得るにはあまりにへだたりがあるということ
 禁酒して3ヶ月というのにぼくの腕はまだひきつってる
 陸のうえで愉しくやってるmalingererたちみたいに過ごしたいのに
 いつまでぽくはふるえていればいいのだろうか
 とりあえずセイコさん、ありがとう
 オノウエ、どうもありがとう
 ぼくらみたいな関係をうまく表せる辞を知ってる?
 ただの知人?
 それとも古なじみ?
 いずれにせよ、ぼくはあたらしい詩を書くつもりだ
 そいつが手紙と呼ばれようが、
 写真と呼ばれようが、
 ぼくにとってはすべてが詩だ
 凍てついた看板を工夫が地上へ降ろすとき、
 ぼくにはあいにくカメラがなかった
 いまでも惜しくおもえてならない
 だからぼくはこいつのことを写真と呼ぶことにするよ
 おもわず、みずから反省させてくれるあなたがたのようなひとがいて
 ぼくはうれしい、とおもう
 安い紅茶でシアナマイドを呑みくだし、
 またしても宛名のない手紙をばら蒔いて歩く
 あなたがたのように少数のひとびとのために歩く