*
そうして水銀の、
滴りを
ガラス管のなかへ
かつてぼくらが若かったとき、
撹拌機のなかで出会ったことを懐いだす
あかときの声、
天雲の、
褥
旅立つ春をどうかお赦し給えよ
かたぶき、かたむく
──わが梁よ奪え
──わが棟よ踊れ
*
果てのない管をたどって
ぼくはかつて、
憑かれたようにかのひとの名を呼んだ
起きもせず、寝もせず夜を明かしては
ほかのひとびとは生きたまま春霞して
やがて水銀のなかへ帰っていくのです
かつてぼくらが老いてしまったとき、
きみのなかの、
上の句、
かたぶく、かたむけ
──きみが閂よ放て
──きみが門よ立て
そうしてぼくは口遊むんだ、いまでも。
ずっとどこかにきみがいるみたいに、いつまでも。
*
雲ゐにもかよふ心のおくれねば、
雲ゐにもかよふ心のおくれねば、
雲ゐにもかよふ心のおくれねば、
雲ゐにもかよふ心のおくれねば、
雲ゐにもかよふ心のおくれねば、
わかるとひとに見ゆばかりなり、
わかるとひとに見ゆばかりなり。
*