みずから書き、みずから滅ぶってこと。

中田満帆 / a missing person's press による活動報告

初秋'19

詩を書くみたいに小説が書けたらいいのにっておもう もうずいぶんまえから「灰は灰へ還す」という題名だけあって、 それはきっとながい片思いと失恋についての、 ちょっと滑稽で、警句の混じったものになる、 そうおもってる 神戸市内では夕暮れから雨、 雨…

雛菊

ぼくはしばらく廚に立って冷蔵庫に鯖があるのを期待した 夏の午后おそくぼくは帰ってきてそれを望んだんだ でもそれは叶わなくなった 夕暮れの使いが ぼくを閉め出したから だからなんだって ってきみがいう かつて母が父を扱き下ろしたみたいに いまだに鳴…

すべては見せかけだろうか崩落する宵待草反転する花と美人画 きみへの道すがら死んでしまったものたちを弔いたいけど茶器がない おれが死に銀河の西へゆくと聞き腹を立ててる母のまぼろし 月の夜のゴンドラゆれるまだわずか魂しいらしいものを見つけて うつ…

ぞく・無料詩集「piss out」について

おれの詩に魅力があるのか、そいつはわからない。どっかのサイトで「オーセンティックな古い書き手」だといわれ、「書き手に魅力を感じないから詩にも魅力を感じない」などといわれてから数年余り、なんとかこうしてやっているわけだ。だれがいったい、なに…

くちを噤む──きみのためにできるのはそれだけと識るこの夏祭 桶の水零れてかれは帰らない水面に熟れる桃へ夜来て ともすれば腿も危ういスカートの妹の肩に飛蝗あをあを 列車には男の匂い充ちたれて雨季も来たれり新神戸の町 ここにいて心地よければ祝福とな…

食肉に関するレポート

手負い それがうかつだったのかも知れない 穴熊は罠から逃げようとする一瞬だった かれは銃を持って威嚇した 鳴き声がした それが祈っていたし、 呪ってもいた 畑のなかで かれが想像したのはすき焼きにされる穴熊の映像だった かれはいつもじぶんがタフであ…

裸足になりきれなかった恋歌

とにかくぼくがいこうとしてるのはきみのいない場所 トム・ヴァーレインにあこがれる女の子のいる場所 リアルさがぼくをすっかり変えてしまった 現実の鋭利さ、あるいは極度の譫妄、 それらの果てで、いままでのあこがれがぜんぶ砕かれたんだ きみのことだっ…

裏庭日記/孤独のわけまえ○単行本発売

裏庭日記2_太文字.pdf - Google ドライブ 販売ページ/ 裏庭日記/孤独のわけまえ どこでも出版ボタン 販売ページ / 製本直送.com | 1冊から注文OK。安さと高品質のオンデマンド印刷 * 今回、長篇をだすことにしました。もっと加筆したいのですが、今回は事…

裏庭日記/孤独のわけまえ〈11〉終

* 青森から東京へもどった。早朝、コンビニの便所を借りる。おなじバスの女の子が尿意を堪えて待ってた。足踏みしてる。もう少しすれば洩らしたかも知れない。まったく、かわいいぜ。そこでまたも佐藤青年の室で泊めてもらった。かれと合流したとき、しこた…

裏庭日記/孤独のわけまえ〈10〉

* 金曜日の夜。わたしは保安官助手に連れられて遺体安置所に来た。滝田らしき死体があがったらしい。射殺体だ。凍てついた湖岸に守られ、きれいなものだった。まちがいなくやつだ。わたしはしばらく黙って立ってた。さまざまな手続きが待ってた。でも動けな…

裏庭日記/孤独のわけまえ〈9〉

* 映画館に着いた。声の主を求めてわたしは扉を叩いた。はじめにレッドネックがでた。わたしを招き入れて舞台まで歩く。スクリーンのまえにはY、裏にはfiveと、見たことのない顔があった。かれが社長ことスコフスキイだった。緑色の眼でわたしを見る。太り…

裏庭日記/孤独のわけまえ〈8〉

* 目醒めるとレッドネックが立っていた。もうひとり知らない白人も。白人は金というより銅色の髪をして、明るいテーラード・ジャケットだ。かれらに連れられて映画館のなかで話があった。かれらはそれぞれちがった電話で、ロージーに薬を売っているという、…

裏庭日記/孤独のわけまえ〈7〉

* 目醒めるとレッドネックが立っていた。もうひとり知らない白人も。白人は金というより銅色の髪をして、明るいテーラード・ジャケットだ。かれらに連れられて映画館のなかで話があった。かれらはそれぞれちがった電話で、ロージーに薬を売っているという、…

裏庭日記/孤独のわけまえ〈6〉

孤独のわけまえ * どこにもいけない。槇原は英知大学を奨め、情報処理の山田から奨められたのは京都建築大学校だった。父とふたりポンコツに乗って京都までいった。ひとのいない森のなかにそいつはあった。父は建築士をさせたがってた。けれどもおれは数字…

裏庭日記/孤独のわけまえ〈5〉

* いちど落ちてしまったら、そいつを受け入れるしかない。学校はあたらしく3年制を導入し、下級生のほとんどそれだった。おれは天神の丘をのぼる。ミニ・バイクが追い越す。うしろには北甫が乗ってる。おれが廊下までたどり着くと、かの女がおれに笑いかけ…

裏庭日記/孤独のわけまえ〈4〉

* ロージーが入ってきたとき、わたしは滝田の写真を見ていた。ロージーはわたしのそばでなにもいわず、寄り添って窓に靠れた。わたしはかの女からのことばを待ち、滝田とのことを考えた。やつがはじめてわたしの個展にやってきてドローイングを見たこと、わ…

so empty

若さになにか意味があるとして、それは失ってから考察されるもの アパートの外壁工事が始まりだした7月の中空をおもいながら 高圧洗浄機の唸りを聴いてるのはおれが敗れものだから きょうは仕事にありつけなかった 残りわずかな金を気にして 身うごきができ…

裏庭日記/孤独のわけまえ〈3〉

* 山口中学校にあがった。公立中学だ。貧しくあらっぽいひとびとでいっぱいのなかに校区はあった。落書きから婦女暴行、工事現場を荒らすのがやつらの流行りだった。薄汚い男や女。耳慣れない言葉づかい。なにもかもいけすかなかった。うしろには長陸という…

裏庭日記/孤独のわけまえ〈2〉

* 6年にあがった。担任はまたしても浜崎だ。好きだった音楽の武内先生は産休に入った。ぼくは図工や音楽の先生とは仲良くなれた。でもほかのすべての先生とはまるでだめだった。武内先生のかわりに醜女が入ってきた。世界の終わりみたいだった。忘れもしな…

裏庭日記/孤独のわけまえ〈1〉

裏庭日記 * 「ニュー・カラーの写真家が好きです。旅の匂いがしてるみたいで」──社交辞令でわたしはいった。たしかに写真もそのジャンルも好きだ。でも、だれにもいいたくはなかった。あの老人のために自尊心を切って渡したようなものだ。「パラダイス・ギ…

relapse

relapse そしてあなたが祈ったあとにも、あなたを苛むものたちは生きてて、 倖せだとしたら、あなたの祈りは無為であり、 あなたがそれまでとおなじか、 さもなくばそれ以上に救われないとしらどうだろう? あなたはあきらめてパンに手を伸ばすか、 それとも…

a fact and dance

fact 午前8時から午后4時と半分までおれは港湾労働をやってた でもある瞬間、なにも信じられなくなった かれらがなにをおれに求めてるのかが わからなくなってしまった おれはうろたえて バナナの凾を落としてしまった だれかがおれを見てる なにも信じられ…

無料詩集「piss out」について

この秋、全国のリトル・プレス、個人詩誌に無料配布すべく、無料詩集「piss out / selected poems : 2003-2019」をだします。'03年から現在までの作品から撰び、30ページほどのパンフレットをつくります。というのもわたしは詩人として横の繋がりが希薄なの…

still hate

for reina terao & sayo takeuchi かの女の声はまるで電話線を通したみたいに聞こえる かつてハネットがイアンの歌声を録ったみたいに耳に来る なんだかずっとそばにいるみたいに聞こえて来るんだ それでもなお知らなかったとかの女はいうだろう べつにそれ…

映画のためのスケッチ(1)

ヴィンセント・ギャロ作品「ブラウン・バニー」のサントラを買った。かれのコメントが書かれていて、そこにはかれの脚本術があった。「正式な脚本こそ仕上がっていなかったものの、覚え書きやエピソードは整っていた。何年にもわたって映画を自分の頭のなか…

永訣のおもざし

* やがてみな花になるのか鳥になるかはかるか機影の翳むところにて 森しずかなり木の畝にどうしていまもうずくまっているのか いつまでも青傘のなかでかくれんぼしてるふたりの猫が ひとりのみかくれ莨のかげがある雨の降る港その端にいて 牛殺しの花がひら…

missing

for yuri nakakubo なにをやりおおせようともかの女にはわからない なにをしでかそうがかの女にはかかわりがない もはやかの女がどこにいるのかさえも わからなくなってすでに10年が過ぎ、 ぼくは夢のなかで OSSへと あの倉庫へと 急ぐ もういなくなったかの…

酒鬼薔薇聖斗をめぐるショート・カット

* たぶん多くの人間が罰するということに激しいけれど鈍感で、赦すということに屈辱と同義なものを見いだしている。これは偏見である。もちろんのこと、これから書くことはすべて偏見の為せる業である。かれを赦せとはおもわないし、さらに罰しろ、曝せとも…

mind out

おもいはさかる、 きみのことが好きで いつか会えるとぼくはおもってた でもそれはまちがいで、 ぼくはみずからの熾きを消す じぶんのなかで永遠みたいにつづく、 過ぎ去ったものへの恋着や、 マイナー性やなんかに甚だ厭気が差したんだ 休日の静かな路次、 …

エセ詩学の半ダース・パック

* おれの短歌がイッた。歌集のための前準備が終わったということだ。あとは15年分の作品を撰んで本にするということだ。撰はわが師に任せるとして、おれは来週から装丁のためにラフに手を着けることにした。金曜の長い午后のことだ。おれはもう2年、まとも…